2006.09.23
スポロディニエラ・ウンベラータ
Sporodiniella umbellata
朽ち木生の虫草を探しにエピアみかど近くの谷へ入る。しかし、見つかるのは小型のクモに発生したギベルラばかりだ。昨年は、もっと遅く来たことを思い出し、山道に出たら引き返そうと思っていたら、小さな背丈ほどのスギの枝に白いガが見えた。ガヤドリの仲間かなと思って近付くと虫草ではなく、ガの回りにクモの巣がかたまった様に見える。カビ?と気が付く。虫草祭や山荘主人さんのところで話題になっているカビではないかと撮ることにした。写真を山荘主人さんに確認して戴くと、採取して転送して欲しいとの事、翌日採取した。
以下、神奈川県立博物館の出川洋介さんのお返事。
『お送り頂いた試料を検討した結果、明らかに、Sporodiniellaである
ことが確認されました。
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海外では、インドネシアや、エクアドル、台湾などから知られていた
熱帯性のカビですが、横浜市の寺家ふるさとの森で中山勉さんの観察
によって、この4年間連続発生をしていて、昨年、中島稔さんがこれを
WEB上で紹介されたところ、高尾山と京都とで観察をされておられる
方より試料をいただきました。あと、茨城県で一回のみ、
いずれも7から10月の特に、蒸し暑い季節に限って発生することが
わかってきていましたが、他からなかなか見つかりませんでした。
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野外の昆虫死骸上に、接合胞子が形成されている例は、過去に
インドネシア、エクアドル、台湾でも報告されているのですが、
いずれも接合胞子の量は少なく、それも、古いものが痕跡程度に
形成されていたというものでした。日本では、昨年、中山勉さんが
発見された小さな虫上のコロニー中に、接合胞子の形成が見られたの
がはじめてで、それを、検討した結果、本種は、雌雄異株だという
ことが判明しました。
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しかし、今回の嶋田さんの発見されたような、接合胞子が優勢で、
そこにわずかに、無性生殖の胞子嚢柄が付随しているといった状況は
全く初めてのことで、驚きました。何か、有性生殖に傾く条件が整って
いたのでしょうか。また、一晩にしてこのように多くの接合胞子が
成熟して黒色になるという野外における観察事実も、はじめての
ことで、大変貴重な記録になります。』
と、かなり珍しいカビであることが判明しました。
香川県では初採取ということですが、これから、もう少し気にしてみようかと思っています。
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